2013年7月5日金曜日

チェスが上手くなるには・・・5.自分のゲームの見直し

5回目。今回はゲームの見直しについて。

第五回目 チェスが上手くなるには・・・5.自分のゲームの見直し

1.ゲームの見直しの意義
 初級者段階で最も上達につながるのはタクティクスだと思うが、ある程度タクティクスもできるようになった次の段階(そしておそらく最後まで)で最も上達に役立つのは自分のゲームをしっかりと検討することだと思われる。

 ゴルフの本をいくら読んでもゴルフが劇的に上手くならないように、結局は実践→修正というステップを踏まない限り、レベルアップは望めない。したがって、いくら本を読んだところで、自分のミスを明らかにしてそれを修正するという作業がなければ、上達は望めない。 そのためにゲームの見直しが必須だ。

 特に初級者~中級者段階では、穴ぼこだらけなので、いかにしてそれらの穴を埋めるかということがよりいっそう重要となる。

2.具体的な方法
 具体的な方法論というのは、人によってまちまちだが、一般的に言われているような方法としては以下のようなものだろうか。

①ゲーム直後に、ゲーム中の思考過程で気になったものを書きだす。
②ブランダー、タクティクスに気づかなかったポイントを確定する。これはソフトですぐにチェック可能。
③ゲーム中での勝敗の別れ目のポジション、決定的だと思われるポジション(Critical Position)を確定する。
④ ①、②、③それぞれにつきソフトの助けを借りて検討する。
⑤④の検討の結果明らかになった問題点を一般化して要約する。
⑥オープニングのラインを検討。

(他にも、自分がプランが立てられなかったポジションにつき、データベースで似たポジションのゲームを探し検討するという興味深い方法を提案しているところもあった。 
http://chess4real.com/a-hardcore-guide-to-analyze-your-chess-games/

 一番無意味な検討というのは、「ここで間違えた」と確認だけして終わるというもの。これでは次に何も残らない。「なぜ間違えたのか」「それはどのようにすれば避けられ、そのためには何をすれば良いのか」というところまで明らかにすることが望ましい。 そうすれば、次に似た状況にあるときにミスを避けることができる可能性が上がる。 問題の原因の明確化→対策。これが重要。

3.例
 ゲーム中、誤った思考過程を辿ってしまうことは非常に多い。例えば、最近こんな例があった。


 
 上記ポジションで11...f6としてしまったが、ソフトの最善手では、11...Bxf5が示された。 なぜ、このポジションで11...Bxf5としなかったかといえば、e5のポーンがナイトとクイーンにアタックされていて浮いていると「勘違い」(誤った思考過程)してしまったからだ。(そして、クイーンと同じファイルにキングが並ぶのが避けたかった。)

 しかし、分岐に書かれているように、白はここで12.Nxe5とすることはできない。なぜなら、12...Nd4!があるからだ(13.Nc6+以外のバリエーションだと、ナイトがクイーンにピンされてナイトが落ちる、又は、Nxc2のフォーク)。

 これは結局、「e5が浮いているから、12...Bxf5はできない」という短絡的な思考に基いている。一般に、強制手順(forcing moves)はチェック・キャプチャー・スレット等が失くなる状態、すなわち静止状態(Quiescence)に落ち着くまで検討すべきとされている。

 しかし、上記のような誤った思考を辿ってしまったため、12...Nd4!という、クイーンをアタックする明らかな強制手を見逃してしまっている。 本来ならば、12...Nd4からのありうる強制手順も静止状態になるまで読むべきであった。(一般にこのようなミスは、Quiescence Errorという)

 したがって、上記ミスからは、「強制手順を含む手は、初見の印象に惑わされず、出来る限り静的状態に落ち着くまで読む」などというような教訓が得られるだろう。

 この例が果たして適当かはわからないが、いずれにせよ、「何が誤っているのか」ということを突き詰める作業こそが最も重要だ。原因が明らかになりさえすれば、対策を練ることができる。逆に、原因が明らかとならなかったら、その点については次回も間違う可能性が非常に高い。 そして、多くのミスが誤った思考過程に基くものであるから、誤った思考過程を矯正するということを意識すべきだろう。

 この作業を繰り返すうちに、「必ず」自分がいつも繰り返しているミスに気付くはずだ。後はそれを修正する努力をすれば良い。

4.その他

 できれば、自分のゲームは保存しておくことが望ましい。 私の場合は、CHESSBASEとFRITZを使っている。FRITZで具体的にゲーム検討して、CHESSBASEで細かい点について付加する等。 データベースがあること、検索が容易なこと、注釈のオプションが非常に豊富なこと、オープニング・レパートリーとのリンクが簡単なこと等々から、CHESSBASEが一番使いやすいと思う。

5.参考にしたページ
・10 Tips for analyzing your Chess games
http://roman-chess.blogspot.com.br/2009/08/10-tips-for-analysing-your-chess-games.html

・A hardcore guide to analyze your chess games in 12 steps
http://chess4real.com/a-hardcore-guide-to-analyze-your-chess-games/

・How to Analyze Chess Games
http://www.chess.com/article/view/how-to-analyze-chess-games

・Game Analysis for Improvement in Play
http://pathtochessmastery.blogspot.jp/2011/08/game-analysis-for-improvement-in-play.html

3 件のコメント:

  1. なるほど…。
    思考の誤りを修正するというのはわかっているようで意外とやれないことですね。
    私はどうしても、安易に「このときは毎回これで大丈夫」とか考えてしまって、一つ一つに対応した思考修正というものを放棄してしまうことがあります。
    そこが一番重要だとはわかっていても、実際一番キツくて辛いところでもあるので、大抵は逃げてしまって駄目ですねー。

    ソフトによる手直しは確実ではありますが、私の場合は思考修正の妨げになっている感じがするので、最近は最終チェック以外には使わないようにしたりしています。
    敢えてソフトを使わないという選択肢も個人的にはありだと思っているのですが、どうでしょう?
    その場合は、相手や第三者が検討に協力してくれない限り客観的な思考修正ができないというデメリットもあるのですが、自分から積極的に間違いを改めようという気概は出るのではないかと考えます。


    長文失礼。
    非常にためになる記事でした。

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  2. ためになるとのことで書いたかいがありました^^

     見直しをすることが次の糧にするためにするのであれば、やはりちゃんと次に形として残る形でやるのが望ましいと思います。そう考えると、単なるミス確認だけでなく誤った思考過程の矯正というのが最も理にかなっているかなと思います。

     紙吹雪さんが指摘されるように、最初はソフトをを使わず最後に確認程度に使用するというやり方の方がより効果はあると思います。その方がより自分の頭で考えるという意味で頭に残りそうですからね。実際、多くのマスターがゲームの見直しは、基本的にはソフトに頼らず自分の頭で考えてやれと言っています。(ソフトは使うなと言っている人もいるぐらいです。)

     ソフトを使うということについては、少し補足して書く必要があったかもしれません。
     やはりソフトは、評価値と最善のバリエーションを示してくれるだけなので、それ以上のことは何も見えてきません。私がやっているやり方は、とりあえずソフトに良い手を示させて、なぜそれが自分の手に比べて良かったのかということを考えるという方法を採っています。そして、ついでにソフトが示す最善手順を見ます。そうすると、結構いろいろなことが見えてきます。「ソフトの示す手によった場合、ずっとビショップの利きがよくなる…こうやってナイトを動かすとアウトポストが取れるのか…」等々。自分が思いつかないような手を示してくれるので、新たな手を知るという意味でもソフトも使えます。そして、それらを検討して気づいたことを言葉で棋譜に書き込んでいくという方法をとっています。

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  3. 初見ですが失礼します。
    11...Bxf5 と指さない事と思考の誤りは関連性が無いように思います。
    そもそもBxf5が良いという根拠を提示して、それとそれ以外を比較対象するステップが抜けているのでは。私なら少なくとも11...0-0と比較します。仮に、単純に「Bxf5=ポーンアップ」と「0-0=キングの安全性、及びポーンアップの狙いを残す」という選択肢を比較した上で、どちらが良いのか?例えば11...0-0 12.g4 のとき白のキングの安全性が如何に下がるか。これらは白のキングがセンターにいて、かつセンターのファイルが開きうる(オープンなポジションで黒の2ビショップが活きる)という点にまで言及しなければいけないかと。そこで白の手にそれらに対するカウンタープラン・・・ 11...0-0 12.Ne4! (センターを閉じる、相手の2ビショップに攻撃する、f6の突き捨てを見せる)を見出した時に、最初のBxf5が唯の「ポーンアップ」狙いでは無い事に気づく。ここに至ればBxf5がNe4に対するより幅広い選択肢を持っているという思考に至るかと思います。11...f6と指してしまったけど、相手の狙い(12.Nxe5)に対して反撃があるので11...Bxf5 で良い(とコンピュータが言っている)これこそが思考の誤りだと私は強く主張します。

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