2014年4月12日土曜日

King's Gambit!

 最近は時間があまりとれないので対局を全然やっていない。 とはいえチェスのことを忘れたわけではなく、新しいオープニングもやってみようかと思っている。 特に今まで無意識的に避けてきたキングズ・ギャンビットといったアグレッシブなオープニングが面白そう。

 先日、注文していたJohn Shawのキングズ・ギャンビットの本が届いた。( なぜか「The Fascinating King's Gambit」という結構大きい本も持っているが、全く読んでいない。) このJohn Shaw本は驚きの680ページ。 執筆に5年も要したらしい。 しばらくはKGの決定版になりそうだ。  King's Gambitの本は長らく発売されていなかったから、気になって買った。

 まだ軽くしか読んでいないが・・・ 内容はというと、「The Refutation of 3.Bc4」なんていう挑戦的なタイトルの章もある。 いわゆるメインライン1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.h4に230ページぐらい費やしている。 結論としては、このメインラインはあまり白にとって良くないという結論がくだされているのが興味深い。 そこで、代替的に推されているのが、1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 g5 4.Nc3!?のQuaade Variationという聞いたこともないヴァリエーションだ。

 実際、このヴァリエーションはほとんどプレイされていないようだ。 ただ、読んでみるとこれが面白い。 実際にプレイされた数が少ないためコンピューターによって作られたラインが多くを占めるのだが、非常に複雑で、最善手で指し続けると、おそらく黒にとってとんでもなく指しにくい。 アマチュアではもはや不可能レベル。

 しかも、最初からいきなりアグレッシブなので、20、30手まで覚えなければならないというわけではなく、相手がミスすれば10手台で勝負がついてしまうこともままありそう。  実際、Shaw自身が、著書の中で、「事前準備をしていなかったら、正確に指し続けることはほぼ不可能」なんてことも書いていた。

 確かに大部の本であるが、Quaade Variation含め、自分が使う部分だけ読むのであれば300ページあるかないか。 この程度なら読んでも良いかもしれない。 何より、20、30手まで覚えて、やっと+=なんていう(アマチュアにとって)実りのないオープニングではなく、覚えたら即効で勝ちにつながりそうに思える(もちろん、KGの場合は相手が正確に指し続けたら=にたどり着くことが通常のようだが、普通は無理だろう)。 何より、Quaade Variationなんていうマイナーなラインに対して完全に対策しているのは、マスターでもほとんどいないだろうし、アマチュアならば皆無だろう(もちろん、2....Bc5などを選択すれば避けられるが)。 ということで、サプライズウェポンとしても最適と思える。

 また、白視点だけではなく黒視点でも書かれているので、1...e5を選択する人にもオススメできると思う。


 試しに、実戦で決まったら面白そうなラインを紹介


2014年3月16日日曜日

The Amateur's Mind 、 ビデオその他

1.The Amateur's Mind

(1)初心者向けではない
 アメリカのIM Jeremy Silmanの本はどの本も非常に評判が良いが、エンドゲームの本以外長らく読んでいなかった。 チェス本の整理をしていて、The Amateur's Mindがあったので、少しだけ読んだ(ちなみにこの本は、How to Reassess your Chessの前段階ぐらいのレベルの本とされている)。

 実はこの本はレーティングが1300ぐらいのときに一度読もうとしたことがあったが、その時はよくわからなかった。 そもそも、ゲームの主眼がタダ取りをされないこと、基本的なタクティクスを見落とさないこと、といったレベル(~1400ぐらい)の段階ではストラテジーの知識は、センターを支配する、オープンファイルをルークを配置する、ナイトでアウトポストを支配する、といった基本的な戦略の知識以外は不要だと思う。 そんな段階のときに読んだから、良さがわからなかったのだろう。

(2)本の中身
 本の中身については、やはり評判が良いだけあってかなりタメになる。 この本のスタイルは、あるテーマ(例えばビショップVSナイト)毎に章分けされていて、最初に当該テーマを体現するようなゲームを紹介、次にアマチュア(レーティング900~2200ぐらい)の人たちに同じポジションをプレイしてもらい、手を選ぶときにどんなことを考えているか口に出して言ってもらう。 その上で、アマチュアの思考過程をSilmanが批判していくというスタイルの本だ。

 実際に本の中で登場するアマチュアたちが口に出す言葉は、まさに自分と同じようなものだった。 そして、それに対するSilmanのかなり厳しい言葉を読むと、いかに自分が何も考えずに、なんとなく手を選んでいたのかということがわかる。改めて考えれば、今までまともにプランなんて考えずに指していた。 例えば、本の中でアマチュアが繰り返すミスの一つとして、「相手の手に驚いてしまって、当初の自分のプランを放棄し、相手の思うがままに操られる」というものがあるが、まさに自分に当てはまる。

 もちろん、現代のスーパーGMといったレベルになればまた話は別になるのだろうけれど、上手くなっていけばいくほど、両プレイヤーともに明確なプランをもってそれをぶつけ合っていくという形になる。 そういうレベルになれば、もっと自分で「考えて」指すことができるのだろうと思う。 今の段階では、「なんとなくこの手が良さそう・・・ついでにブランダーではない・・・よし」的な思考過程なので、プランなんてものとは程遠い。 局面評価はできないし、自分の手が良いか悪いかについて明確に理由付けすることができない。

(3)現状と課題
 ①正確な読みができること(主に視覚化の能力)、②局面評価がある程度できること、③プランをある程度立てられるようになること、④タクティクスのストックを増やすこと、これらが今の自分の問題だと思っている。  これらをちゃんと向上させることができれば、もっと上手くなれるだろうと思う。

  ①は果たして向上させることができるかどうかわからないが、寝る前に視覚化の練習を5分ぐらいやることにしている。 ②③については、とりあえずSilman本(The Amateur's MindとHow to Reassess your Chess)を徹底的に潰すことをとりあえずの目標にしようと思っている。 ④については、タクティクスを解き続けることが重要で、後はUnderstanding Chess TacticsやTune Your Chess Antennaといった本も読もうと思っている。

2.ビデオ

(1)ビデオを観た
 ビデオビデオと言っていたので、chess.comでDaniel RenschのIQPのビデオを観た。 やっぱり、ビデオの方が頭に残りやすい。 一応ビデオを見ながら記録はChessbaseで残しているが、本を読むよりずっとわかりやすい。 わかりやすいというか、話し言葉なのでどこが重要かといった点が明確なので、頭に印象づけられやすい。

 確かに一部の非常に優れた本は存在するが、そういった本を除いては後はビデオ任せというのも一つの方法かもしれない。 chess.comのみならず、ICCにもかなり大量のビデオがあるのでそういったビデオを一日一個ぐらい観ていくだけでも相当ためになりそうだ。

(2)ビデオサマザマ
 例えば、ICCにはJohn Watsonのポーン講義が大量にあるが、こんなのを全部見れば、Drazen MarovicやAndrew Soltisのポーン本を読むより、案外ずっと頭に残りやすいかもしれない。chess.comにもPawn Structureの講義シリーズがある。

 ちなみに、ICCのビデオについては、「Game of the Day」というビデオの一部については無料で観れるようだ。 ご丁寧に昔のGame of the Dayのビデオをオープニング毎に分類してくれているブログがあった。興味がある人はどんな感じか観てみると良いと思う。

http://bishopsbounty.blogspot.jp/2009/05/113-grandmaster-chess-videos-free.html

 現在、ICCは1ヶ月体験コースを実施しているので、仮入会してビデオを観てみてよかったら入会するというのも一つかもしれない。

2014年3月7日金曜日

読みと視覚化

 タクティクスをちまちまとやっているが、やっぱり読みが弱いと自覚する。 読みが正確にできるかどうかは実力にももちろん影響する。 なんだかんだ言って、マスターであったりエキスパートぐらいのレーティングのプレイヤーとそれ以下のプレイヤーを分けるものの大きな要素の一つとして、読みの力がある。

 そして、これは成人からチェスを始めた人と子ども時代からチェスを取り組んでいる人の違いの一つでもあると思う。 子供時代から将棋なりチェスなりに親しんでいたら、頭の中でボードを思い浮かべるのはそれほど難しくないだろう。 そして、成人プレイヤーがある程度以上に上達し難い原因の一つでもあるだろう。

 読みの力で重要なのは何よりも正確さだ。 仮に5手(相手の手も含む)を正確に読む力があれば、その他の能力が高ければ相当に強いだろう。 確か、ソルティスのStudying Chess Made Easyにも、普段から5手正確に読めれば十分と書かれていた。 

 例えば、仮に候補手が3つあって、それぞれの分岐が総計10あるとする。 正確に読むことができるなら、一つ一つ検討していって最終的に手を決定するのは難しくないだろう。 ただ、読みが弱いと、ひたすらに同じヴァリエーションを検討し続けて、進んでは戻って進んでは戻っての繰り返しで、非常に効率の悪い読みを繰り返し、結局何が何だかわからなくなるなんてことになってしまう。

 読みが正確にできない最大の理由は、頭の中で明確な視覚化(Visualization)ができないことにある。

 例えば、TisdallのImprove you chess Nowでは、読みを正確にする方法として、「飛び石」(Stepping stones)の方法を紹介している。 どういう方法かというと、2、3手読んだら、その時点での局面を頭に焼き付け記憶し、ヴァリエーションの検討をそのポジションから始めていくというもの。 一気に5、6手読むと混乱しやすいので、2、3手先の局面を頭の中で固定化し、そのポジションから検討していけば良いのだとする。

 なるほど、と思えそうだが、できない。 そもそも、2、3手先であっても正確に頭に残すことができない。 もしかしたら訓練したらできるようになるかもしれないが、現状ではできない。 もちろん、おぼろげに2、3手であれば頭に残るが、例えばそれが8手のタクティクスとかだったら、5、6手あたりでどんどんと不明確になる。

 ということで、視覚化を明確にすることができれば、Tisdallの主張するような方法で正確に読みができそう。 同時に、それができるようになればタクティクスもゲームもかなり良くなりそうな気はする。しばらくの課題だ。

 読み、視覚化を向上させる方法としては、まずは単純に普段からタクティクス問題などで最後まで読み切る練習をすることが挙げられる。 他には、エンドゲームのスタディ(パズルのように解くことを目的として作られた人為的なポジション)などをやることも良いとされる。

 視覚化を強化することを特化している方法については、hitsujyunさんがかなり詳細にまとめられている(http://imaging-board.blogspot.jp/ 他にも、手元に何もなしでできる方法としては、http://www.braillechess.com/rreid.htmlここも参考になる。 特に、ナイトでa1からスタートして全マスにナイトを移動させるという方法は結構良さそうだ。 昨日寝る前に試してみたが結構難しい。 本としては、上述のImprove your Chess Now の他にPractical Chess Analysisという本がこのテーマについて扱っている。

 しばらく読みの強化に取り組んでみようかと考えている。

2014年3月3日月曜日

Svetozar Gligoricの曲

わりとどうでもいい話。

ユーゴスラヴィアの伝説的なチェスプレーヤーでグリゴリッチ(Svetozar Gligoric)という人がいた。結構多趣味な人だったらしく、88歳にして初めて自分が作曲した曲をCDとして発売した。88歳のおじいちゃんの曲ということで古めかしい曲ばかりと思いきや・・・ ノリの良い曲がやたら多くて驚いた。なんとラップまである。Youtubeで聴けるのでいくつか紹介してみたい。 聴いてみるとわかるが、とてもじゃないが88歳の曲とは思えない。





2014年2月17日月曜日

ゼロからはじめるチェス2 上級編

 続いて上級編いってみましょう。

 ここからは未到達の部分なので、こうするのが最も合理的で効率的でないか、という推測を述べていくにとどまる。 ということで妄想記事扱い。

目次

第三 上級編(レーティング1700~2000)
 1.タクティクス - なぜ気づかないのか
 2.ストラテジー - Mastering三部作?
 3.エンドゲーム - シルマンシルマン・・・
 4.ゲームの見直し
 5.思考過程
 6.オープニング - やりすぎ注意!
 7.まとめ
 8.実践例
第四 最後に


第三 上級編(レーティング1700~2000)

 今まで初級・中級・上級という言葉を使ってきたが、一般人レベル、つまりアマチュアレベルでの初級・中級・上級という意味合いであることに注意。 もっと細かく分類すれば、アメリカ的に、初級・中級・上級・エキスパート・CM・FM・IM・GMとなる。

1.タクティクス - なぜ気づかないのか
 タクティクスは解けば解くほど実力があがるというのは事実だと思うが、ある程度のところでこの方法論は限界があると思う。幼いころからチェスをやってる人には必ずしも当てはまるかはわからないが、特に成人になってから始めた場合にはこの問題は顕著。 タクティクスを発見できない理由を、大人の能力である理解力で補う。

 なぜタクティクスが発見できないのかという理由を端的に示すならば、「駒とマスの配置に係るタクティクスに関する情報を把握できていないから」だと思う。 つまり、意味もなく並んでいるように見える駒でも、駒同士の直線関係、駒同士の守りの関係、特定の重要なマスとの駒の直線関係、特定な重要なマスと駒の守りの関係、等々、駒とマスの配置についてのタクティクスに関わる情報が存在する。 そして、それらを意味ある情報としてとらえることができないため、タクティクスに気づかない。 マスターにとっては明確な意味合いをもつ盤面でも、アマチュアにしてみれば意味もなく雑然と駒が並んでいるに過ぎないということになる。

 じゃあ、何をすれば良いのか。 それは、タクティクスの発生する条件を見極める力の向上、あるいは、駒の配置からタクティクス上の意味合いを読み取る能力の向上。この点については、以前書いた記事の「チェスがうまくなるには・・・」シリーズの第四回目で既に詳しく書いてある。

 特に、Understand Chess Tacticsは必読。翻訳英語なので非常に読みづらいが、素晴らしい本であることは変わらない(第三版はどうなっているか知らない)。 Understand Chess Tacticsの著者は、「おっさんになってからチェス始めたけど、わしFMになれました。」という人なので、大人になってから始めた人にとっては参考になるところが多いはず。

 まとめると、Understanding Chess Tactics、また、できれば、Tune Your Chess Antennaを完全に頭にぶち込む。この両書は本当に良書なので(ダジャレではない)、時間をかけて取り組めば効果はばつぐんだ(多分)。やり方は前回の中級編のタクティクスの項の書いた方法と同じ。

 さらに時間があれば、もう一冊ぐらいタクティクス本、たとえば、The Complete Chess Workoutなんかを一冊潰せば十分過ぎるんじゃないだろうか。

2.ストラテジー - Mastering三部作?
 ストラテジーに関しては、中級編で述べたことを継続するだけで良いように思う。

 ただし、一つおもしろい本がある。Johan HellstenによるMastering Chess Strategyという本。  この本は何よりもまず、掲載ゲーム数が非常に多いという長所がある。また、ゲームの全解説ではなく、重要ポイントに絞った解説なので、サクサク進める。 さらに、テーマ毎に分類されているためパターン認識能力向上に最適。加えて、ChessbaseファイルとしてE-Bookが存在するので(以前の記事で紹介したはず)、高速閲覧が可能。

 ポルガー三姉妹の親父のLaszlo Polgarが出版した「Chess Middlegames」という、チェスのタクティクス・ストラテジー・エンドゲームの要素ごとに4000ポジションぐらい分類したトンデモ本が存在するが、それをずっとアップグレードしたバージョンという感じの本。

 ちなみに、この本はMastering Opening Strategy, Mastering Endgame Strategyとしてシリーズが存在するのでGOOD。 ある程度マスターのゲーム集をやったら、このMastering三部作をやるのが、数をこなすという意味では一番効率的のように思える(これはただの私見かつ個人的推測なので、信ぴょう性なし)。

3.エンドゲーム - シルマンシルマン・・・
 何も考えずにシルマン本で良さそう。

 ただし、理論的なエンドゲーム(theoretical endgame)、すなわち、勝つか負けるかドローになるか理論上定まっているポジションは一定数暗記しておくべきというのが半ば通説。 なので、エンドゲームをモリモリやりたいなら、de la Jesus Villaの「100 Endgames You must know」を完璧にできたら理想かもしれない。あるいは、Pump up your ratingにも100個のエンドゲームリストがある。 とはいえ、真剣な人以外は不要だと思う。

 また、  Mikhail ShereshevskyによるEndgame Strategyもやたらと評判が良い。 人によってはエンドゲームの必読書に挙げている。悪い評判は聞かないのでできたらベストなのかもしれない。 ただし、もしかしたら、上記のMastering Endgame Strategyで代替できるかもしれない。 これは両方共読んでないためわからない(要検証)。

 とはいえ、多分chess.comで1800とか1900とか2000とかのレベルだったら、そんな知識のレベルまでは要求されていなさそう。やはりシルマン本に絞るのが妥当か。

4.ゲームの見直し
これは続けるべき。繰り返しになるので省略。

5.思考過程
同上

6.オープニング - やりすぎ注意!
 オープニングが一番の課題。 上記1~5については、おそらく誤ったことは書いていないと思うが、ここはいろんな意見があるところなので、一つの意見と思って読んでほしい。私自身の個人的考えの色合いが強いので、必ずしも参考にする必要はない。 

 なお、Pump up your Ratingのオープニング学習の項は、Chessbaseを使用することを前提に書かれているため非常に参考になる。また、John WatsonのMastering the Chess Openingsの第四巻の最後にあるコラムも具体的なオープニング選択の目安として実力毎に分類してくれているので参考になる。さらに、真っ当な成功法かつ一般的なオープニング学習に関する意見が集約されている本としては、Steve GiddinsのHow To Build Your Chess Opening Repertoireが参考になる。

(1)やっぱりやりすぎない
 オープニングは時間をかけようと思えば無限に時間がかけられる。実際、マスター達はほとんどの学習をオープニングに割いているらしい。 事実、オープニング学習って夢があって結構楽しい。「ほうほう、これが最新のラインで・・・何・・・2013年でこんなラインが・・・ふむ・・・」なんていう自己満足に浸るのには最適。 挙句の果てには「わしのオープニング・プレパレーション♡」なんてものまで作りかねない。

 が、もちろんこんなことはやめた方が良い。時間がかかるのならばなおさら極力時間をかけない方が良い。 ということで、基本的な方針としては同じで、複雑過ぎるラインは選択しない。 例えば、白1.e4ならルイ・ロペスのメインラインまっしぐら、フレンチのWinawer、カロカンのアドヴァンス・ヴァリエーションの複雑なやつ、オープン・シシリアンの複雑なライン、等々は複雑かつかかる労力がかかりすぎる。 何よりも、費用対効果での見返りが少なすぎる。

 なので、やっぱり時間をかけたくないなら、複雑なオープニングは避けるべき。 ただ、もっと上を目指すのならば、後々のことを考えてメインラインを選んでいくというのが良いだろうし、それが一般的な見解でもある。 メインラインを学んでこそチェスの理解が深まるという意見は根強い。 しかし、あくまでも趣味の範疇でとどめ、かつ、少ない時間で早く上達することを目的とするなら、オープニングに多くの時間を割くべきではない。そして、この考えに従うならば、複雑なメインラインに従うのは避けた方が良いということになる。 ただし、時間の兼ね合いで時間がある人は自由に選んだら良いと思う。

(2)オープニング本に要注意
  オープニング学習でハマってしまう罠として、オープニング本はやたらと魅力的な本が多いというのがある。 「Killer Opening...」 「Explosive Opening...」「Strategic Opoening...」「Mastering....」等々魅力的な題名+宣伝文句で、あの手この手でアマチュアを籠絡しようとしてくるのがチェス本出版社。 題名+宣伝文句+できそうなプレイヤーによる高評価レビュー、そんなものが揃えば、「わしもこれやったらチェスうまくなるかもしれない・・・」と思える。

 ・・・が、基本的にオープニング本に期待してはいけない。オープニング本には二つの類型がある。一つは具体的なラインが書かれたレパートリー本、もうひとつはゲーム掲載本。 特に前者はアマチュアには基本的には不要だと思う。 買うとしたら、後者のタイプ、かつ、タクティクスのアイデア、ストラテジーのアイデア、等々が明確に紹介されているものに限るべき。

 なぜ、前者のタイプが不要かというと、そもそも紹介されているラインを全部自分のレパートリー化することは現実的に不可能であるという点(もちろん膨大な時間があれば可能かもしれない)、また、暗記もおそらく不可能であるという点が挙げられる。

 そして、何よりも現代においては、Chessbaseといったデータベースが存在するので(しかも、勝率、近年でプレイされている割合等の情報付き)、そんな紙媒体の完全レパートリー型の本の意義は限りなく小さい。 参照するとしても、あるラインを検討しているときに意味がわからない、といったときに辞書として見るぐらい、あるいは、面白いアイデアが紹介されているか確認する程度の扱いにとどめるべき。 逆にそういう意味では使えるとは思う(例えば、John WatsonのPlay the French)。 通読して全部暗記を試みるのはアマチュアにとっては無駄かつそもそも現実的に不可能なのでやめておいた方が良い。


 ちゃんと読んでないから偉そうに言えないけれど、最近Everyman Chessから出ているMove by Moveシリーズは一手一手解説してくれているので良さそう。また、ストラテジー、典型的なタクティクス等の解説もあったりする。 また、手に入れるのが若干難しいが、Mastering The French, Mastering the Spanishといった本は、ポーン・ストラクチャーに即して、アイデアについてメインに書かれているので良い。

(3)じゃあ、何するの
 じゃあ、何するのかといえば、ある程度は自分のラインを確立して相手がやりにくいラインを模索するのが重要だと思う。 そして、その作業は基本的には基本的なアイデアが紹介された簡単な本+Chessbase等のデータベースによるオープニング構築作業で十分。

  例えば、フレンチのエクスチェンジ・ヴァリエーションを例にとると、黒側でやってみると非常にやりやすいというのがわかる。実際に、例えばchess.comのデータベースで見れば、エクスチェンジ・ヴァリエーション(1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5)の勝率は、白21.5%、ドロー52%、黒26.5%と黒が高い始末。 シンプルなオープニングは相手にとってもシンプルなので、数を多くこなしている黒の方がやりやすいなんてことになる。

 そして、ある程度のレベル以上になると、相手にとってやりやす過ぎるラインばかり選択すると苦しくなるのは事実。そういうときは、できるだけ、相手にとってやりにくそうなラインを選択していくのが一つの方法。 データベースの勝率が一つの目安になる。

 例えば、フレンチのエクスチェンジで、Monte Carlo Variationというのがあるらしい(1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 Be7 6.Nf3 O-O 7.Bd3 ) 。 フレンチというか1.d4のオープニングのような形になるが、勝率は白53.7%ドロー29.6%黒16.7%とやたらと勝率が高い。 勝率が高いということはフレンチ・プレイヤーにとってやりにくいラインではありそうである。(とはいいつつも、Monte Carlo Variationについて無知なので、実際この勝率がどの程度の意味合いがあるかは知らない)

  こういう作業を通じて、自分なりのラインを作っていくのはなかなかに良い案だと思う。 「オープニングがダメだ!→最近発売された白レパートリー本を丸暗記しよう!」なんていう単細胞的方法を採るよりはずっとマシではあることは確か。 ただし、あまりにもマイナー過ぎるオープニングだとアイデアも理解できないままプレイしてしまうことになるため、良くない。ある程度情報が集まるオープニングが望ましい。要するに、ライン構築作業はデータベースで自分で構築、アイデア等は書籍等(あるいはDVDも)で学習、と分担する。 

 時間がかからない(キーボードの↑↓→←を押しまくるだけでライン構築可能)、おそらく相手も大して知らないだろうから労力をかけすぎる必要がない、というのは大きい。 勝ちに行くためには相手の嫌なことを労力をかけずに行うのがベスト。 ただし、こういう方法だけで上のレベルまでいけるかは不明。 とはいえ、それ以上を目指すのは本当に真剣にチェスをやっている人ぐらいだと思う。 また、自分のラインを構築する際の具体的方法論については、Pump up your ratingが詳しい。

 もしやる気まんまんならば、例えば、Chessbaseで発売されているMegadetabase等を購入して、自分が選択したラインのマスターのゲームを自分なりに分析していく作業はおそらくかなり有益。Megadetabaseには玉石混交ではあるが(アマチュアにはよくわからないという意味で) 、ゲーム解説がついたゲームが6万個ぐらい収録されている。それらを一つの参考として自分なりに分析作業を加えればベスト中のベスト。 アイデア等も理解できるはず。 ただし、相当時間はかかる。 もちろん、既に当該ラインに関するゲーム本があるならば、それを利用した方が良い。

(4)オープニングが決まらないときは
 あまり考えすぎは良くないと思うが、オープニングが決まらないときは、Chess.comのForum等で質問するのも良い。フレンドリーに書いたら、上手いプレイヤーが懇切丁寧にアドバイスしてくれることもある。

 また、簡潔なオープニング本として「Understanding the Chess Openings」という本があるので、各オープニングの特徴をつかむためには使えるかもしれない。ただし、薄すぎるのでそれ以上の使い道はなさそう。

(5)まとめ
 具体的な方法論としてまとめるならば、①データベースで相手のやりにくそうなラインを選択、②当該ラインについて本があれば本でアイデア等を学ぶ、③時間があれば自分用のラインを栽培する、気になるところがあればレパートリー本等で説明があるかチェック④やる気がもりもりなら選択したラインのマスターのゲーム自己分析あるいはゲーム本の参照、ということになる。

7.まとめ
 上記すべてをまとめれば、①タクティクスは、タクティクスの構造理解+演習本一冊完璧化。②ストラテジーは原則として従来通りの方法。ただし、Masteringシリーズが吉かもしれない。③エンドゲームはシルマンが基本で、やる気があれば理論的ポジションやエンドゲーム・ストラテジーをおさえる。④オープニングはほどほどに。ただし、相手が嫌がるような自分のラインを作る。やる気もりもりなら選択したラインのマスターのゲームを自分なりに分析する。ということになる。

8.実践例
 中級編と同じく一時間をとれたとしたら、やはりタクティクス15分、ゲーム+ゲームの検討45分がベストだと思う。ストラテジー、エンドゲームは暇があるとき、週末にやるぐらいか。 90分なら、まずはエンドゲームを潰してしまい(シルマン本のAまで、余力があればエキスパートまで)、その後ストラテジーとオープニングを交互に30分という感じか。 具体的な時間配分は前回の中級編参照。

 また、中級編で書き忘れていたが、たまには長い時間のゲーム(例えば45/45や30/30)をするのはかなり重要のようだ。長い時間をかければかけるほど思考過程に意識することもできるし、自分のゲームの記憶は残りやすく、それゆえにミスの記憶も残りやすい。当然、ゲームの見直しは必須。 

第四 最後に

 以上が、今私が知りうる限り、また、考えるうる限り最も効率的な方法になる。 ただし、方法論自体よりも、最も重要な点は、意識的な学習を繰り返したかどうか、また、いかに無駄を省くかにかかっている。 それさえできていれば、明らかに誤った方向に進まない限り、大して効果は変わらないというのが真実だろう(多分)。 これはチェスに限らず、どこの分野でも同じだと思う。 正しい方向性と正しい努力というやつ。

 前回の記事の最後でも書いたが、絶対に気をつけるべきは、①オープニングやり過ぎない、②ゲームの見直しはする、③タクティクスを軽視しない、④やることを明確に絞って手を広げない、ということだと思う。 これさえ守って、意識的な学習を繰り返して、かつ、それを継続することができれば、上達しない理由がないのではないか。

 もっとも、今まで述べてきたような方法はできない人も多いとも思う。 第一ハードルが、意識的な学習はするのが大変だということ、第二ハードルが継続の難しさ。 これは、どれだけ意気込んでも難しい。 逆に、意志力のある人にとっては大して難しい話ではないかもしれない。 もっとも、時間を大してかけない、例えば、一日1時間、90分ぐらいなら、実践できるかもしれない。 これを2時間、3時間とか実践することができる人がいたら、かなり上達するのではないかと思う。 誰か実践してみて結果が出た!なんてことになったら、レポートしてください。


参考になれば幸いです!

ゼロからはじめるチェス1 初級・中級編

 前回の記事で紹介したPump up your Ratingの中で、Talent is Overrated(直訳すれば「才能は過大評価されている」)という本が紹介されていた。興味があってKindleで買って飛ばし読みしたが、結構面白かった。それも踏まえて、ゼロからチェスを始めた場合、合理的で効率的な上達法とは何なのかを考えてみたい。

 上達法関連の本はやたらと多いが、重要な部分は共通する。 それらをまとめる意味も含めている。 ただし、単なるアマチュアの一意見なので、信ぴょう性は保証できない。ただ、上達関連の本等は無駄にたくさん読んではいるので、そういった知識の総体という意味では、間違ったことは書いていないはず(多分)。 むしろ、以下で書いていることは、今まで読んだ本・記事等で知ったことをまとめたものに近い。

 また、以前に「チェスが上手くなるには・・・」というシリーズも書いたが、いくつかの点で変更点がある点と、実力の段階に応じてまとめたという点で多少趣が異なる。 「チェスが上手くなるには・・・」のシリーズでは、個別のテーマで詳しく述べてあるので、このうさんくさいヘボブログのブログ主の言うことをちょっとは聞いてやろうかと思ったなら、そちらも参考にすれば 、ちょっとはためになるかもしれない(多分)。まあ、話半分、眉唾もので読んでもらいたい。

 さらに、できるだけ合理的な方法論を考えるというコンセプトなので、「もはや勉強」という感じもする方法になった。 ただし、従ったら確実に無駄は省ける(多分)。  そこまでチェスに必死になるのかという問題はあるが、限られた時間を合理的に使いたい、できるかぎり無駄を省きたい、とりあえず早くうまくなりたい人もいるはずなので一つの試論として書いてみる。 あくまでも理想論としての学習方法なので、もちろん私自身が下記の通りできているというわけではない(できていたらもっと上手い)。

  なお、以下で述べる「レーティング」はChess.comのStandard基準。チェスの強さというのは限られた時間の中で、どれだけの強さを発揮できるかというものだと思うので、通信チェスのレーティングは別のものとして考えている。

 テーマは「時間をできるだけかけず、早く上達する方法」。 ハイパーロング記事なので注意。

目次
書き終わって気づけば長くなりすぎたので、目次を作成・・・

第一 初級編(レーティング~1200)
 1.事始め
 2.はじめてみる
 3.チェックメイトの基本的な形をおさえる
 4.1手のタクティクス
 5.初級編まとめ
第二 初級~中級編(レーティング1200~1700)
 1.タクティクス再び
 2.オープニング
 3.ストラテジー
 4.エンドゲーム
 5.ゲームの見直し
 6.思考過程
 7.まとめ
最後に これをやると無駄なことリスト



第一 初級編(レーティング~1200)

1.事始め
まずは、ルールを覚える。特にアンパッサンなどは忘れやすいので注意。この点については、「チェス入門」がわかりやすい。

2.はじめてみる
 まずはゲームに慣れること。ルールを覚えたら試合数をこなす。 最終目的はチェックメイト、中間目的は駒得なので、とりあえずは駒をとることが目的にする。 ゲームをすることやはり一番上達につながるので、本など読まずゲームをする。

プレイする場所は、chess.comがベスト。ICCはうまくなってからで良いと思う。各チェスサイトの特徴は以下のような感じ。

chess.com : 現在もっとも勢いのあるサイト。プレイヤーが多く、タクティクス問題、みんなのブログ記事、マスター達の記事、議論ができるForum、等々、相互交流も図れる。 また、プレミアムメンバーになるとビデオ閲覧、タクティクス問題がたくさんできる、等々の特典あり。 ただし、どうしてもビデオが見たい、どうしてもChess Mentorやりてえ、なんてことがない限り、★会員で十分。
 欠点としては、チーター率が結構高い、ある程度上のレベルになるとプレイヤーが少なくなる、といったもの。  ただ、これから変わっていきそうな気もする。

ICC:昔からあるところ。 特徴はマスターが多くプレイしているため上位層が充実していること。また、ウェブサイトではなくソフトで動作するところなので、噂によるとチェス・エンジンを起動しているとチーターとして検挙されるらしく、チーターは少ないらしい(以前どこかの記事、あるいは以前のブログでこの点については扱った)。 ただ、有料会員登録しない限りプレイできないので若干排他的。そのうち、chess.comに負けそうな予感。

Chesscube: 変なポイントシステムが導入されていて面倒くさい変なサイト。ビデオ閲覧機能等も実はあったりするが、全てにおいて半端。レーティングの初期設定が高いこと、初期補正がないため、レーティングが全体的に高く、高レーティングを得てホクホクできることが利点か(今はどうなってるかしらんけど)。

Lichess: シンプルイズベストな場所。機能はあまりないが、登録も簡単、サイトも見やすい、プレイヤーもそこそこいる。 なので、プレイするには良い場所。

チェス入門の対局場:日本語なのでわかりやすい。いつもある程度は人がいる。場合によっては上手な人に教えてもらうことができる等の利点がある。 ただし、チーターがそこそこいる、プレイヤーの絶対数が少ない、といった欠点がある。 ただ、このサイトの最大の長所は対局場というよりも、初級者用の基本講座。 手とり足とり教えてくれるので、まずはここから。


3.チェックメイトの基本的な形をおさえる
 しばらくやってみたら気づくのは、チェックメイトが結構難しいこと。 特に、ルーク+キングのチェックメイトでもやり方を知らなかったら、延々とキングを追いかけまわしてドローなんてことになりかねない。 なので、基本的なチェックメイトの形を覚える。

 本としては、「Checkmate for Children」が簡潔かつわかりやすくベスト。 邦書なら「チェックメイトの技法」がある。ただし、結構分厚い。 チェックメイトのために長い本なんて読んでられねえ、という場合には、Pandolfini's Endgame Courseの最初の数十問を解くだけで十分。 あるいは、Wikipediaの「Checkmate」のページだけでもおそらく十分。

4.一手のタクティクス
 駒取りを目指すといっても、相手もそう簡単にとらせてくれない。そこで、タクティクスの出番。 いわゆるフォーク、ピン、スキュアー、といったもの。 基本的な点については、やはり「チェス入門」でわかりやすく紹介されている。

 タクティクスは基本形を完全に理解するのが最も重要。 もっとも、市販の本は難しいものが多い。 そこで、まずは、一手のタクティクスを理解する。

 http://www.entertainmentjourney.com/index1.htm

 一手問題に関しては、この「How to get to 1900」というサイトに無料で問題が掲載されている(ページ中頃にある「White/Black to move and win in 1 move」)。 これを印刷する。 非常に簡単なので、15分もあれば30問ぐらい解けるはず。 3周ぐらいして、完璧にするのが理想。 具体的な方法論については、下記の中級編のタクティクスの項を参照。

 ちなみに上記サイトでは、2手問題、3手問題もある。 チェスに金なんてかけられてらんねえ!という人は、下記の中級編におけるタクティクスの代替の問題集としても2手・3手問題を使える。

(追記)書くのを忘れていたが、「どうしたらチェスできみのパパに勝てるか」と「チェス 魔法の戦術」は両方共基本的なパターンを押さえ、かつ、問題数も少ないので非常にオススメ。

5.初級編まとめ
 多分、上記のことが初級(レーティング1200ぐらいまで)を抜け出す最短ルートの一つではないかと思う。 まとめれば、①ゲームを継続して行う、②タクティクスの一手問題が確実に解ける、③チェックメイトができる。 総時間として大したことはないはず。

第二 初級~中級(レーティング 1200~1700)
 ちなみに、中級編が1700区切りなのは、私自身のchess.comのStandardのMAXが1720ぐらいだったので、それ以上のことはわからないため。とりあえずの区切りとして1700とした。 実際は、1800ぐらいまでが中級編の範疇になると思う。

1.タクティクス再び
(1)タクティクスの重要性
 なんだかんだ言って、レーティングが2000ぐらいまではタクティクスタクティクスタクティクスだと思うので、タクティクスは続ける。この段階では一冊を完璧にするのが目標。 具体的には、やる気満々なら1001問が収録されている、「1001 Chess Exercises for Beginners」がベスト。 そんな大量にやるのめんどいという場合は、500問程度の「Chess Tactics for Champions」または600問程度の「Learn Chess Tactics」が良書。

(追記)Dan HeismanのBack to Basics : TacticsもGOOD。 特に初級者~中級者に向けて書かれており、メイトのパターンが掲載されていること、各タクティクスのモチーフについて解説が丁寧にされていること、また初級者がミスしがちなCounting(駒を取って取られて・・・という駒交換の計算のミス)という概念(Dan Heismanが考案らしい)について詳しく説明されていること、という点が特に優れている。 問題数は600問程度(たしか)だったと思うので量としてもちょうど良い。

 例えば、chess.com、Chess Tempo、Chess Tactics Server等でネット上のタクティクス問題もあるが、繰り返しがしやすいという点において本の学習に軍配が上がる(ただし、Chess Tempoの有料版は除く)。

(2)具体的なやり方
 いずれの本を選ぶにせよ、完璧に「潰す」ことが最重要。 時間を省く、タクティクスを覚えこませるという目的からすれば、一定程度の数の問題を完全に理解していることが重要。 実際、一日10問ぐらいでも2、3ヶ月で終わる。

 合理性・効率性を追求するならば、次のような手順でやるべき。

①実際にゲームで出会った局面であるかのように、最後まで「読み切る」。わからなくとも、手は選んで読む。
②解答を確認し、わからなかったらなぜ気づかなったか理解するよう努める。
③解いた問題に日付を記入。1日後、1週間後、3週間後、1ヶ月後、等決められた周期で復習する。 復習の際には高速で、しかし、読み切る作業は怠らない。

 集中して解くこと+繰り返しが肝。 もはや勉強みたいになってしまうが、一冊終わった後に繰り返すことから比べれば遥かに頭に残るし、時間も大幅に削減できる。勉強法等では一般的な方法だが、「Talent is overrated」でもやっぱり重要だと書かれていた。

 どの分野でも上達しないことを時間がないということを言い訳にする人は多いが(まあ、それは私のことなんですが) 、上達の差を分けるのは時間ではなく、どれだけ「意識的な練習」を「繰り返した」かによる。 この方法に従えば、確実にタクティクスは向上すると思う。 そして、かける時間は一日15分ぐらいでも十分だと思う。
  
2.オープニング
(1)オープニングはほどほどに

 私自身もオープニングをいろいろ調べたが、この段階ではあまり意味がないというのが私自身の結論であり、チェス学習の通説的な考え方。 要するにオープニングについてあれこれ調べたことは、上達に資しないという意味では、途方も無い時間の無駄だった。

 とはいえ、全く知らないというのもアレなので、オープニングの種類にもよるがメインラインの10手手ぐらいまでは知っておいた方が良い。また、オープニングを学習する際には分岐点(Tabiya)を意識する。 20手ぐらいまで「一般的に」覚えるのは完全なる時間の無駄と思った方が良い(ゲームの検討の過程でヴァリエーションを検討することはあると思うが)。

 また、オープニングの選択については、一つのラインをひたすら極め続けるか、複数のラインを覚えていくかという問題がある。 しかし、よほど時間がある場合でない限り、オープニングを突き詰めるなんてことは無理なので、 この段階では特に気にせず気に入ったオープニングを選べば良い。

 さらに、できるかぎりシンプルなオープニングが良い。 仮にもっとうまくなって上級者になればその段階ではオープニングの知識も増えてくるだろうし、自分のスタイルもできてくるはずで、その段階でこそオープニング選択は真剣に考えれば良いし、その段階でこそまじめにオープニングを構築すべき(多分)。 なので、あまりオープニングをどれにするかという点について考えまくるのはよくない。 そもそもオープニングの優劣の「せい」で負けるなんてことはないはずなので、なおさら。
 
(2)負担の少なそうなオープニングの例
 シンプルなオープニングと言われても・・・と思われると考えられるので、例を挙げてみたい。

  例えば、

白1.e4なら・・・
・オープンゲーム(1...e5)に対してはイタリアン(Bc4)、
・フレンチ(1...e6)に対してはエクスチェンジ・ヴァリエーション
・カロカン(1...c6)に対してもエクスチェンジ・ヴァリエーション
・シシリアン(1...c5 + d6)に対してはBb5の系統のロッソリモまたはモスクワヴァリエーション
・シシリアン(1...c5 + e6)に対しては、キングズ・インディアン・アタック
・モダン・ピルツ( 1...d6/g6)に対しては150 Attack

黒なら・・・
1.e4,d4,c4全てに対して1...e6(フレンチ、クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドになる。QGDのメインラインはTartakower Variation)

 等々が比較的負担が少ないオープニングといえるかもしれない。ただし、覚える量が少ないからといってプレイするのが簡単というわけではないが(例えば、KIA、ロッソリモ等)。

(3)調べもの、オープニング維持のために
 具体的なオープニングについては、Fundamental Chess Openings(FCO)で調べるのがベスト。辞典のような本だが、オープニングのアイデア等々についても説明されていてわかりやすい。また簡潔。この段階ではこれ以上の知識は不要。不要!

 また、オープニングについては、Chessbase社のChessbaseというソフトがあればベスト。 これがあれば、オープニングをデータベースとして保存されるし、気になるところは内蔵のオープニングツリーで続きのヴァリエーションが保存できる。 ゲームを終えた後に、新たに気づいたラインを追加することもできるし、ヴァリエーションの中にコメントを入れることもできる。 ただ、Chessbaseは使い方がわかっていないと、慣れるまで使いにくいソフトなので慣れるには時間がかかるかもしれない。

 なお、オープニングソフト関連は、なんたらWizard、なんとかposition trainer、等々いろんなソフトを試してみたが、Chessbaseがどう考えてもベストなので、オープニングソフトとしては他のソフトを検討する必要はない(人柱)。なので、何も考えずにChessbaseを使用するのがベスト。

(4)まとめ
 仮に、ChessbaseとFCOがあるならば、オープニングの学習は次のような感じになる。 ①ゲームをする、②ゲームの見直しをする過程でヴァリエーションをチェック、③気になるならFCOで当該ヴァリエーションを検討、④データベースに保存。

 ということで、オープニングを個別に学習する時間はとる必要はないというのが結論。

3.ストラテジー
 ストラテジーとは直訳すれば「戦略」で、チェス上のより具体的意味では、アウトポスト、オープンファイル、各駒の特性、等々の戦略上重要な概念を利用して、有利にチェスの試合を進めていくための知識のこと。

 まずは、アウトポスト、オープンファイル、ウィーク・スクウェア、バックワード・ポーン等々の概念を理解することが出発点。 中身が詰まった本ではないが、PandolfiniのWeapons of Chessで概念の説明がわかりやすくされている。 スッカスカの本なのですぐに読める。

 一般的に、ストラテジーの学習のためにはマスターのゲームを学習することが良いとされている。 具体的には、http://home.comcast.net/~danheisman/Events_Books/General_Book_Guide.htm、ここのページの最下部にある「Recommended Instructive Game Anthologies」 というところにあるような本が一般的には定評がある本。

 ただ、この段階においては、ストラテジーもゲームの結果を左右する最重要の要素というわけでもないので、時間をかけるべきではない。やるとしても一冊ぐらいを丁寧に「完璧に」つぶすことが必要十分。  具体的には、「50 Essential Chess Lessons」が超簡潔なので良い。 とりあえず、一冊を丁寧に潰すこと。 それ以上の知識を持っているプレイヤーはこの段階ではこのレベルでは99%いないし(半端な知識をもったプレイヤーは私みたいなのがウジャウジャといるが)、それ以上の知識も不要。

 もっとも、時間が有り余って仕方ないぜ!という人は、どんどん進んで行った方が良いと思う。できるだけ多くのゲームに触れた方がパターン認識の観点からは理想的なので、一日一ゲームなんていうのも良いかもしれない。 そうはいっても、学んだことは必ず復習して、学んだゲームのコンセプト、何がポイントか、何を学べたか、等々はちゃんと頭に残る形にしておかなければならない。 一回やったぐらいでは、よほど真剣に考えたのでもない限り無駄。無駄! 仮に一日一ゲームを見る時間が確保でき、合理的グルグル復習サイクルを取り入れることができたら、一年間でかなり成長しそうな気はする。

 具体的な学習手順としてはタクティクスの項で述べた方法が理想的。

4.エンドゲーム
 エンドゲームはポーンエンディングの基本的な形を理解していることがまずは最重要。何より登場確率がもっとも高いため。 といっても類型は非常に少ないため一瞬で終わる。基本の基本は2時間あれば終わる。 また、ルークエンディングをいくつかやる程度。それだけ。 無駄に難しい割に出現機会のないエンドゲームはやるだけ無駄。そもそも、そんなエンドゲームは100回のうち1回ぐらいしか現れるかどうか。

 具体的な本としては、Silman's Endgame Courseを自分の能力に合わせてやるのが良い。レーティング別に本が分かれているのが良い。 アメリカで有名なチェスコーチでもあるジェレミー・シルマンが、この程度の実力ならこの程度のエンドゲームの知識で十分とセレクトしたものが掲載されているので、あまり考えずに従っておいて良い。

 多分、Bクラスぐらいまでやれば超十分といえるほど。 説明がやたら詳しいのもGOOD。 各レベルごとに進んでいくのであれば、大した量ではないのですぐに終わる。 「これで足りないんじゃないか・・・」と思ってしまいそうになるかもしれないが、それは「足りない症候群」という危険な徴候なので注意。何も考えずに、マシーンのようにシルマンにヘーコラ盲従しておくのが吉。

 ちなみに、初学者向けとしてPandolfiniの本も有名だが、①説明が場合によっては適当すぎること、②必ずしも重要度に応じて進むわけではないこと、③誤記が多すぎること(ネット上で一応は正誤表が存在するが)、等の理由のためオススメできない。特に①②がダメ。ただし、最初のチェックメイトの項はまとまっていてわかりやすいかも。シルマン本がある以上、あえて使う必要性のない本。

 あれこれ手を伸ばさず、シルマン本一冊を自分の実力に応じてやるというのがベストというのが結論。また、理想的には、上記タクティクスで述べた学習手順に従うのがベスト。

5.ゲームの見直し
 以上、タクティクス、オープニング、エンドゲームについて述べたが、一番伸びを早くするのは自分のゲームの見直しだと思う。 具体的な手順については「チェスが上手くなるには・・・」の中のゲームの見直しの記事を参考にしてほしい。

 さらに付け加えるとしたら、今回読んだPump up Your Ratingに書かれているように、ミスを類型化して記録していくという方法はかなり効果的(推測)。 また、同書によれば、できる限り最初はソフトの手を借りずに自分で分析をし、最後にソフトでチェックするのが良いとしている。

 なお、ミスの類型化というのは、例えば以下のようなもの。このように類型化しておけば、自分がどこでミスをしがちなのかを理解できるし、次からそのミスをしないように気づくことができる。 ミスをなくせば、それだけ上達できる。逆に言えば、自分の典型的ミスを除去することができなければ、どれだけ本を読もうが絶対にあるラインから上へと上達することはできない(ほぼ通説)。


タクティクス
ナイト・フォークに気付かなかった 2
クイーン・キングのスキュアーに気付かなかった 1

ストラテジー
相手のポーン・プロモーションに気づけなかった 3
オープンファイルを有効活用できなかった 4
アウトポストの不活用 2

エンドゲーム
ポーン・エンディングの基本形で失敗 2


6.思考過程
 思考過程については、「チェスが上手くなるには・・・」シリーズの第一回・第二回目で述べたので参考にしてほしい。 ただ、大幅な変更点がある。 それは、思考過程の枠組みをプログラム化して、毎回手を検討する際に意識をするのはおそらく無駄な試みなので、やめておいた方が良いということ。

 例えば、第二回の記事で以下のようなDan Heismanが書いていた思考過程を紹介した。

①相手の脅威の確認。特に、強制手順(forcing moves)の検討。
②相手のとりうるプランの確認。 自分のプランの確認。
③ 無条件にforcing movesは最初に全て検討。
④③でタクティクス等がなければ、自分のプランを達成させる手を「全て」チェック。なければ、相手のプランを阻害する手を全てチェック。(Initial Candidate Moves)
⑤④における手を、安全か(blunderに至らないか)どうかという観点から、剪定する。
⑥⑤において残った手の中から、最終ポジションの比較によって最も優れているものを選ぶ。(Final Candidate Moves)


 こんな思考過程をいちいち実践するのは不可能であるし、現実的ではない。また、そんな都合よく頭はできていない。 なので、こんなリストは作らなくていいし実践する必要もない

 では、どうすれば良いか、これもPump up your ratingに書かれていた方法を参考にした方法だが、一つの思考過程のテーマをしばらくの間のゲームのテーマとすることによる。

 例えば、「いつも浮き駒でタダ取りされてしまう」という問題点があるとする。 そうであれば、しばらくの間は「自分の駒で浮き駒がないかをチェックする」を思考過程の至上命題として、ひたすらそれをゲームで実践し続ける。 これをしばらく続ける、そうすると繰り返し意識することにより、それが無意識で実践できるようになる(らしい)。

 なので、 無理に思考過程のプログラムなど作らず、一つ一つ実践して、無意識にぶち込んでいくのがベストと思う。

 ちなみに、身につけておくべき思考過程におけるチェックポイントとして、一般的に言われているものとしては以下のようなものがある。

①手を打つ前に、ブランダーではないかチェック。
②浮き駒が存在しないか確認
③一手のタクティクスの確認
④相手の脅威の確認 チェック・キャプチャー・スレット(タクティクス等の脅威)
⑤③と関連するが、自分の手番であっても、 「相手の手番だったら何をするか」を確認する。
⑥駒の位置関係の把握(直線関係、駒同士の守りの関係等)
⑦複数の候補手を検討する(candidate moves)
etc...

7.中級編まとめ
 以上まとめるならば、①タクティクスを継続、②オープニングは見直しの際にチェックする程度、③ストラテジーもやりすぎない、一冊で十分④エンドゲームはシルマン本だけ、⑤ゲームの見直しはする、⑥思考過程はテーマを決めて実践する。

 例えば一日にチェスに当てられる時間が1時間とした場合、タクティクスに15分、ゲームに45分(検討含む)。 週末にストラテジーとエンドゲーム学習をちびちびやる程度で十分。 例えば、ストラテジー本として「50 Essential Chess Lessons」を選ぶなら、週に2ゲームやれば、25週間で終わる。シルマン本にしても、E、Dランクはすぐに終わる内容だし、Cランク、Bランクもそれぞれ個別のレベルとしては大した量ではない。 

あるいは、プラス30分確保、つまり一日90分確保できるなら、一日交互でストラテジーとエンドゲームを学習するのが良いかもしれない。 例えば、20分は当日分の新しい勉強、残り10分は復習とする(例えば前日の復習に5分、一週間前の復習に5分)。20分でも集中すれば結構進めることはできるし、シルマン本でエンドゲームをやるだけだったら、エンドゲームはすぐに終わる。なので、ゲーム集の学習に時間を割ける。
 ということで、大して本も買うことなく、時間もかける必要はない(ただ、Chessbaseはあれば望ましい)。 ポイントは意識的学習を繰り返すこと、これが最も最も最も重要。結局これができないから上達しない。また、本は一冊を完璧にすることを目標にすべき。手は伸ばしちゃダメ。

 ゆっくりやったとしても半年ぐらいあれば、タクティクス本一冊、ゲーム本一冊、シルマンのエンドゲーム本Bクラスまで、ぐらいは終わるはず。 そして、それぐらいが学習すべき内容としては十分ではないかと思う。これだけ意識的かつ合理的に学習したならば上達しない理由がないように思える。誰か実験台になってやってください。


最後に:これをやると時間の無駄になることリスト

 私自身の経験上+また一般的に言われている無駄なことリストを挙げてみたい。 いろいろ調べていく過程で、同じように時間を無駄にしてしまう人もいるはずなので、参考にしてもらいたい。 私自身は、途方もない時間を無駄にした。 実際、上記の方法論にしても、他の人が時間を無駄にするのを防ぐ役割もある(大げさ)。

・オープニングやりすぎ
・ストラテジーにこだわりすぎ
・ネット上のタクティクス問題をだらだらやりすぎ
・タクティクス軽視しすぎ
・マスターのゲーム本等をやたら買いまくってちょい読み多すぎ
・本買いすぎ、買っても適当に読みすぎ
・Blitz,Bulletやりすぎ
・調べものしすぎ
・上達論とかこだわりすぎ
・情報量多すぎ
・やること絞れなさすぎて、結局一つも「完璧」にできていない
・手を広げすぎ
・検討もせずに無意味な対戦こなしすぎ
・復習しなさすぎ
・思考過程にこだわりすぎ、思考の合理化には限界がある
・そもそもチェスに時間かけすぎ 

上記のリストはやったとしても100%時間の無駄といえるので、そんな無駄なことはしないようにしましょう。




続く・・・(次回からは自分が到達していないレベルなので妄想記事になります)

2014年2月15日土曜日

久しぶりに・・・

 もはや廃墟ブログ化してしまっていたこのブログだが、先日コメントをいただいたので、久しぶりに更新してみたい。

 最終更新が2013年8月・・・意外と数ヶ月しか経っていないのが驚き。 最後の記事にある通り、この数ヶ月はチェスというよりはピアノの方が趣味にかける時間は多かった。 そうはいいつつもピアノも最近はぜんぜんやらず、そもそも趣味にかける時間がなくなってきている現状。

 そうはいいつつもチェスを完全に辞めたというわけではなく、たまにネットで対戦はやっていた。 前みたいに本を読んだりということはあまりしなくなったけれど、たまにやる程度にはやっぱり楽しいチェス。 チェスははまりすぎると怖いけれど、ぼちぼちやるのには楽しい。 ということでぼちぼち程度には続けていこうとは思っています。

 達成可能性は低いけれど、今年の目標としてはchess.comのStandardで1800、chess.comのタクティクスで2100ぐらいを目標にしたい。  むやみに時間をかけずとも、一日30分~1時間程度でも、継続することさえできれば、達成可能な気もする。



 さて・・・こんな話はどうでもいいが、先日、最近発売された本を読んだ。







 読んだのはPump up Your Ratingという本。チェス中毒者垂涎ものの題名。 直訳すれば「レーティングをガン上げしようぜ」的な感じか。 まあそんな胡散臭い題名の本だけれど、内容はいたって真面目。推奨されている方法も奇をてらったものではなく成功法。

 スウェーデンのIM(インターナショナル・マスター)のアクセル・スミスが著者。 2時間ぐらいでざっと見た感じだけれど素晴らしい本だと思う。 チェスの上達方法論としては結構な数の本を読んだけれど、これが最も優れていると感じた。具体的で、何より、Chessbaseといったプログラムを使うことを前提として具体的な使い方、練習方法が詳細に述べられている。何も考えずにこの本に従っておけば、かなり上達しそう。

 また、内容としても、Improve your chess now, Move First Think Later, 等々今までの思考過程や上達論等の議論を踏まえた上で書かれている。 能動的な学習の強調、Chessbaseを使ったオープニングの学習方法論(これは今まで書籍としてはなかったと思う)、エンドゲームとして具体的にこれぐらい(100個)やれば完璧なんていうリストもある。 特に、自分のゲームの分析の項については、ただ 「自分のゲームを見直そう」という抽象論ではなく、ミスのリストを作って自らのミスの類型化する方法など非常に有益に思える。  実際、著者の指導の下に GM(グランド・マスター)になっている若いプレイヤーもいるようで、効果は実証されているようだ。

 全体的に合理的でオープンな姿勢が 感じられるのも良い。 今までのチェスの上達論は、ロシアが強いだけあって、「ロシアのプレイヤーならだれでも知っている・・・」「ロシアでは常識だけれ ど、ある方法によって・・・」とか、「秘密」を開示するような姿勢が散見された。 優れている本は残しているが、ドヴォレツキーの本とかでも似たようなこ とを感じる。そういうのはとっつきにくい。

 それに対して、本書は「知識はみんなで共有しましょう」という感じで、オープンに自らのトレーニングプラン、オープニング・プレパレーション等々をどんどん開示してくれる。  また、伝統的な「とりあえずマスターのゲームをやってみましょう」 といった今までの方法を踏襲するのではなく、「より合理的で効率的でまたやっていて楽しい練習方法」をやろうという姿勢が感じられ、必ずしも伝統的な方法 に則っているわけではない。まあ、スウェーデンだからそういう風潮があるのかもしれない。

 本書でとられている練習方法はIMやGMも実践している内容ではあるけれど、内容としては特段に時間と労力がかかる方法というわけでもなく、中級者でも参考になるところが多いと思う。 仮に一日に30分ぐらいしかチェスに時間をかけられないとしても、例えば本書で紹介されているようなタクティクスの学習方法(基本タクティクス問題をひたすら繰り返す)をやれば、結構レーティングは上がりそうな気がする。

 かなりオススメ