2013年6月28日金曜日

チェスが上手くなるには・・・4.タクティクスその2

 前回の続きでまたタクティクス。 これまた最初に述べるのを忘れていたが、このシリーズについては、一応は、私自身の意見というよりも、今まで読んだ本、ネットの記事等から得たものを基にして書くようにしている。

チェスが上手くなるには…4.タクティクス・チェックメイトその2

1.タクティクス問題演習の学習方針

 前回の記事でタクティクス・チェックメイトの基本的なパターンを覚えるのが重要だということを書いた。もちろん、その後は数をこなすべきということになる。その前にチェス学習について思うところを。

(1)パターン認識
 成人がチェスを学習する場合、子供に比べ、やり方を意識すべきだ。子供の場合記憶に対する刻み込みが成人よりも深いし、何より吸収力が高い。したがって、数をこなせばこなすほど身に付けるものも多いという面がある。しかし、大人の場合はそうはいかず、すぐに忘れるし、がむしゃらにやっても効果は薄い。

 また、何より、一日に3時間以上チェスにかけるなんていうことも現実的には厳しい。そう考えると少ない時間でできるだけ上手くなりたいなら、有効に時間を活用しなければならない。じゃあ、どうすべきか。

 現在チェス界では、マスターとそれ以下の最大の差は、それまでに蓄えてきたパターンのストック数にあるということが半ば通説化しているようだ。Adriaan de Grootという学者が、同じポジションにつきマスター、アマチュアに考えさせ、思考過程を述べさせるという実験をした。結果、読みの深さには大して差はなく、マスターらはむしろ「直感」によって最善手を選んだ。そして、その直感とは何なのかといえば、前に見たことがある、つまり、「似たパターン」を知っていたということにあった。

 De Grootの実験で用いられたポジションはタクティカルなものではなくポジショナルなものであったが、パターン認識能力はもちろんタクティクスにも関わる。むしろ、タクティクスこそがパターンを知っているかということが重要になる。

 確かに、日々タクティクスの本を解いていて、それが何が目的なのかと考えれば、目の前の問題を解くことではないだろう(もちろん、タクティクス問題を解くこと自体に喜びを感じるのならば別だが)。 むしろ、何十問か何百問か解いている問題のうちに「似た」問題が実戦に出た時に解けるようにするためだろう。

(2)具体的方針
 以上のように考えると、タクティクス演習で主眼とすべきは、無目的に問題数をこなすよりも、パターンのストックに重点を置くべきということになる。つまり、むやみやたらに多くの問題を適当に解いていくのではなく、一定数の問題を「繰り返して」確実に「潰す」ことを優先すべきことになると思う。記憶に刻み込むには、結局、集中力と繰り返ししか方法はない。

 「潰す」ということが人によっては2周することかもしれないし人によっては7周することかもしれない、そのあたりは個人差はあるだろう。いずれにせよ、薄い印象の数を増やすよりも、繰り返して無意識レベルまで叩きこまれた濃い印象を残すべきだ。 タクティクスのパターンも限られている以上はなおさらだ。

 このように考えると、具体的演習方法としては、繰り返しがしやすいという点で、ネットのタクティクスサイトによるよりも本に軍配が上がるだろう。もっとも、Chess Tempoの有料版では、「2013/6/29日以降に間違えた問題」というように指定することができるので、Chess Tempoでも十分いける。


2.タクティクスの仕組み理解
 
 最近、2冊ほど面白い本が出ている。Understanding Chess Tacticsという本とTune your Chess Antennaという本だ。後者については前々回の記事で触れた。

(1)Understanding Chess Tactics
 まず、前者のUnderstanding Chess Tacticsだが、この本は、フォーク、ピン等々のタクティクスのモチーフの仕組みについてこれでもかというぐらい詳しく解説してくれている。例えば、ピンであれば、ピンする駒、ピンされた駒、背後の駒と3つの要素に分けて、それぞれの要素に固有の問題点についてチェックしていくという徹底ぶり。

 この記事を読めば詳しいことはわかるが(なかなか示唆的なのでオススメの記事)、この本の著者は25歳からチェスを始めてFMになったという異色の経歴を持つ。この人も同様に、大人がチェスをやるのならば、合理的に考えて学習すべきとする。そして、タクティクスについても、タクティクスの構造をしっかりと理解して、その発生条件を理解すべきとする。その主張の顕れがこの本ということになる。

 ただ、ドイツ語からの翻訳版なので文章が読みにくく、英語が苦手な人には読みにくいかもしれない。 その点を除けば、非常に素晴らしい本。理詰めで考えたい人にはオススメ。第二版は、巻末に300問の確認問題もある。

(2)Tune your Chess Antenna
 こちらの本もUnderstanding Chess Tacticsに趣旨は似ているが、微妙に異なる。Understanding Chess Tacticsの方が、タクティクスのモチーフそのものに焦点を当てているが、こちらの本は、もっとざっくりと、「一般的にどのような条件が揃った場合にタクティクスが発生しやすいか」ということに焦点を当てている。

 具体的には、前々回の記事の「2.タクティクスの回避」の項で述べた要素について、軽く解説を付した後、問題演習用の問題が提示される。 文字数が少なく、英語も平易なので、英語が苦手な人でもオススメできる。 

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